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よのなかは。

映画・本の感想。観て/読んで心打たれた作品を紹介しています。

賞味期限切れになる前に…『キャッチャー・イン・ザ・ライ』感想

今週のお題「プレゼントしたい本」

著者:サリンジャー
翻者:村上春樹
白水社、2006年

キャッチャー・イン・ザ・ライ (ペーパーバック・エディション)



旧訳タイトル『ライ麦畑でつかまえて』でも有名でしょうか。サリンジャーキャッチャー・イン・ザ・ライ』、読了しました。



主人公と同じ年齢になったら原書で読むのだと、中学生の頃から楽しみにしていたのに…どうしてこうなった。
10年間忘却温存している間に、主人公を追い抜いていた…!気づいた(思い出した)瞬間、今すぐ読まないと賞味期限切れになる!と焦り…持っていた日本語版を発作的に読むに至りました。何年も取っておいたのに…2時間で終わってしまった…ホールデン流に言うなら、「ぶっとんじゃうよな、まったく!」


村上春樹訳で読みました。そういえば、私がサリンジャー知ったきっかけは村上作品でした。彼が高校生の頃からサリンジャーを愛読していることは知っていたので、翻訳に不安はありませんでした。終始軽妙な文体で綴られ、非常に読みやすいです。




感想

日常の中で、あなたが黙っている瞬間も、頭の中も静まり返っているかというとそうではなくて、実際には言葉を発していない瞬間にも頭の中では目まぐるしく言葉で何かを考えたり感じたりしていますよね。


そういう頭の中だけで行って、本来なら誰にもオープンにしないような思考をバーンと垂れ流したのが、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』です。


より具体的に言うと、主人公 ホールデン 17歳が自分の周囲の世界に対して、片っ端から皮肉なバッシングを(主に脳内で)していくのを延々読まされる、それが『キャッチャー・イン・ザ・ライ』です。


それ故、視点が一方的で捻くれていますし、そもそも主人公は皮肉を言わないと死ぬタイプの少年。強烈です。
「この作品、受け付けない!」
と声を大にして主張する人がいるのも納得です。


実際読んでいても、主人公の言葉を借りるなら、「いやはや、まいっちゃうよね」と思わずにはいられませんものね。




でも、私は好き。理由は2つ。

ひとつは、面白いから

読みながら声を出して笑ってしまうような作品って、そう多くないです。でもこれは間違いなくその1つです。
しかもニヤニヤ笑いとかクスクス笑いではない、腹から出る本物の笑い声が発生します。私にとっては、自分が案外笑うことができるということに気づかせてくれた貴重な作品でもあります。




もうひとつは、こんなに捻くれてるのに、何でだろう、途中からホールデンが愛しくて堪らなくなってしまったから

ホールデンって、全てに対して辛辣で、そこは勿論彼の魅力ではあるんですがが、それはそれとして。弟と妹に関しては、少し雰囲気が違うんです。勿論視点の鋭さは変わらないのですが、それでも愛情を抱いているのがこちらに伝わるわけです。この加減が堪らないですね、まったく。


印象的だったのは、116ページの、妹がどんな子か語るホールデンと、168ページの、弟のことを回想するシーンと、
349ページからの妹との長い会話!妹にある台詞を言われて危うくぶっ倒れそうになるところから始まる、ホールデン怒涛の成長です。それまでのクソガキ(失礼)はどこへやら、大人として妹に向き合うシーンは、感無量でしたね。


個人的には以上の3つが弟妹関連のベストシーンで、実は他にもぐっときた24場面にしおりを挟んでいます。しおりの厚みで膨張している本を見ていると、私がこの作品を相当好きみたいに思えてきます。実際そうなんですよね、残念ながら。



プレゼントしたい本

未読だが気になっている…という方は、取っておいてる場合じゃないですよ!読むなら一刻も早く読みましょう!


もしあなたが主人公と同じ17歳かそれより若いのなら…羨ましい!じゃなくて、18歳の誕生日が来る前に一度読めたら最高だね!楽しんで下さい!


でも私がこの本を一番贈りたいのは、兄です。なぜなら我々兄弟は(残念ながら)ホールデンにとてもよく似ているから!