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よのなかは。

映画・本の感想。観て/読んで心打たれた作品を紹介しています。

一気読み必至!『ロンドンの超能力男』感想

『ロンドンの超能力男』
著者:スタシャワー
訳者:日暮雅通
扶桑社、1989年

ホームズのパスティーシュ、長編です。ホームズとワトスンのキャラクター設定は聖典(原作)に忠実。時代設定も聖典と同時期。
推理の方も、ドラマチックな話ながら堅実で、安心して楽しめます。
聖典を意識したネタが、大小様々そこかしこに散りばめられています。
聖典ファンで劇的な話が好きな方は必ず読みましょう!(笑)
絶版本なので、(パスティーシュって、絶版本多くないですか?)本を探すところから冒険が始まる感じが何ともいえないです。

あらすじ
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レストレード警部が「今世紀最大の犯罪」を携え、ベーカー街を訪れているシーンから物語がスタートします。
容疑者はフーディーニという名のアメリカ人奇術師だといいます。彼は脱出王の異名をもつ天才で、この度盗難をやったというのです。

盗んだのは機密文書だそうで、詳細は「機密なので」レストレードも説明できません。
ホームズは推理する材料を伏せられるのは大嫌いですから、今回の事件には乗り気でない様子。
しかし、「政府からは『この件についてホームズに相談してはならない』と特別命令を受けている」というレストレードの言葉で、機密だらけで気分が乗らなかったホームズに火がつきます。

手始めにロンドンで行われるフーディーニに会いに行き、ホームズとワトスン、レストレードは、フーディーニと早速知り合いになります。
ところがベーカー街に帰ってみると、フーディーニの奥さんが「夫の身に危険が迫っている」と相談してきて…
と、こんな具合に幕が開きます。
その後も、様々な人物が登場し、ドラマが展開していきます。
政府の極秘文書や、政府、奇術師…という要素からも推察できるように、このお話、派手です。
ルブランのルパンくらい派手です。(ホームズのパスティーシュの説明にこの喩えはどうなのか?)伯爵夫人とか変装とかトリックとか、ドイツ人、復讐・・・構成要素が既に派手です。
それらの要素の扱いが見事で、一気に読ませる勢いにつながっています。


感想
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エンターテイメントとして良作だと思います。
振り返ると奇想天外な話に思えなくもないんですけど、読んでいる最中は本当に入り込んでいました。
なんといってもスピード感とスリルがあるので、どんどんページをめくってしまいます。
(ホームズが「途中段階の推理は言わない」という設定も聖典に忠実なので、ワトスンと一緒にじりじりしながら・・・。)
描写が上手いのか、脳内実写化が苦手な私でも頭にばっちり映像が浮かんだのも、物語に入り込めた一因かと思います。著者のスタシャワー氏は作家兼マジシャンだそうで、特にマジックショーの描写は抜群です。(作中に劇的なシーンが多いのは、マジシャンであるが故でしょうか?)

そんな中、個人的に一番血が湧き立ったシーンは、ラスト直前です。
「このシーン映画化して!」と願わずにはいられませんでした。
何がどう楽しいか書くとネタバレになってしまうので、「ホームズとワトスンとフーディーニの三人が、ジェームズ・ボンド級にやってくれます」とでも言っておきますね。

もう一つ、ホームズとマイクロフトの会話も印象的でした。
十文字以内で言葉のキャッチボールをする、省エネにも程がある兄弟の会話(の抜粋)がこちらになります。

「かもしれない」
「おそらくそうだ」
「だとしてもだ」

いかがでしようか。
一ページほどこの調子でした。台詞の「」ごとに改行されているので兄弟会話のページだけ余白が多くてスカスカで、そんなところも面白かったです。
こんな小説よんだことないのでニヤニヤしました戸惑いました。「詞かよ!」と。

それでは最後にもう一つ。
この本、謝辞が多かったです。20人越えてました。
謝辞捧げられた人たちをキャスティングしたら余裕で実写化できるな・・・と思いました。こんなに謝辞が多い本、初めて見ました。

最後に本編と関係ないことを書いてしまいましたが・・・これにておしまい!