よのなかは。

映画・本の感想。観て/読んで心打たれた作品を紹介しています。

誰にもできないことを。『イミテーションゲーム』感想

2014年、ティルドゥム監督

今年最後の映画は、やっと観ました!『イミテーション・ゲーム』です。
ネタバレ厳禁であらすじと感想を書いていきます。

まずは簡単に内容を紹介します。

1951年。
大学教授で数学者のアラン・チューリングの家に空き巣が入ります。
しかし盗まれたものはなく、ノック刑事は不審に思います。
調べていくうち、チューリングは第二次大戦中MI6(英国諜報部)に在籍していたことが判明。しかし当時の資料は抹消されており、背後に何か巨大な陰謀があるのでは…と疑念を抱いた刑事は、チューリングを取り調べることにします。チューリングは警官に、自分が何者で、MI6で何をしていたのか語り始めます。その内容は、驚くべきものでした……


その"内容"がメインストーリーになります。さわりだけ紹介しますね。

時は第二次大戦のさなか、1939年英国の数学者アラン・チューリングは、ドイツ軍の暗号エニグマを解読するため政府に雇われます。
周囲とぶつかりながらも、暗号解読に心血を注ぐチューリング。次第に同僚たちも彼を信頼し、絆が生まれます。

しかし彼には誰にも言えない秘密がありました…。




…いかがでしょうか。

それではこの辺で感想に移ります。

感想は4項目に分けました。

①内容について
②キャストについて
③登場人物について
④どうでもいい話(観たくなかった『イミテーション・ゲーム』)

①内容について

この作品は、
ⅰ.戦後(1951~)
ⅱ.第二次大戦中(1939~)
ⅲ.チューリング少年時代(192x?~)

の三つの時代を軸に構成されています。(時代が行ったりきたりするタイプの映画です。)

まず〈ⅰ戦後〉から始まりますが、メインは〈ⅱ.第二次大戦中〉のチューリングの物語です。(この時代のシーンが尺の大半を占めます。)
そして、要所要所で〈ⅰ戦後〉と〈ⅲ.少年時代〉の映像が入ってくる、という構成です。
最後は再び戦後に戻ってきて映画が終わります。

この、緻密に計算された時代の移動が、この映画をただの感動ドラマではなくサスペンス的魅力を具えた名作にしています。


特に〈ⅲ.少年時代〉のパートは必見です。
少年時代が少しずつ明らかになっていくと同時に、メイン〈ⅱ.第二次大戦中〉と〈ⅰ戦後〉のパートもそれぞれ佳境に向かいます。
そして三つの時代がつながるとき、観る者を衝撃が襲います…!


②キャストについて

主演のベネディクト・カンバーバッチ、残念な天才(ごめんなさい)の役やらせたら天下一品ですね。高慢な態度を維持しつつ戸惑う演技とか、リアルすぎて震えます。

助演のキーラ・ナイトレイ、出番は少な目ですがパワフルでまっすぐなキャラクターを力強く演じていて、素敵でした。個人的に、彼女のキレる演技が目力強くて好きなんですけど、今作でもありました。キレるシーンが。

その他でいうと、主人公と同じ暗号解読チームのメンバーを演じたマシュー・グードが、存在感ありました。
見たことあるなと思ったら、『イノセント・ガーデン』という映画で人間離れした不思議な青年の役を演じた俳優さんでした。
イノセント・ガーデン』で彼が演じたのは、ちょっと他にないキャラクターで、大好きです。一度見たら忘れられないキャラクターでした。無垢なのに邪悪というのがぴったりで…。話は逸れましたが、彼、目力が凄まじい上にかなりの長身なので、目立ちますね。

最後にもう一人、主人公の少年時代を演じたアレックス・ロウザー。
オスカー級の好演でした。抑制した感情の表現がリアルで、引き込まれました。今後の活躍が楽しみです。


③登場人物について

『イミテーション・ゲーム』、舞台は第二次大戦中の英国諜報部、主役は秘密を抱えた数学者、その上メインストーリーは暗号解読ですので、当然重たい映画でした。

なのに…………

笑える。

というのも、会話が面白いんです。

なぜなら、チューリングが個性的すぎるから。

どういうことかというと、彼は人の言った言葉を文字通りに受けとります。
そのため、会話するたびなんともいえない残念な空気を作り出してしまうのです。
しかも彼にはオブラートに包むという概念がなく、誰に対しても率直(を通り越して辛辣)な言葉を放ちます。
天才で人の気持ちを理解しない、まるで二次元キャラクター!

シンプルに表現すると、「イヤな奴」ということですね。


でも、その癖の強さも含めて、彼、チャーミングです。

この映画の最大の魅力は、チューリングの不器用さだと私は思っております。

ものすごい天才が人間に関しては全然ダメ、
「誰にもできないことができるのに、誰もができることができない」
(そういえばこの映画、「誰にもできないことをする」というのが一つのキーワードになっていました。)

それってたまらなく孤独ですよね。
その上それで苦しんでいるのを見ると…愛しさと切なさと心強さが止まりません。


人って「何か欠けてる」ものですよね。それが、他人とかかわる中で、知らないうちに補われたりしていくのかなあ、なんて思いました。
後は、死んでも人は人の心に火を灯すことができるんだよなって、あー、いやー、この辺でやめときます。

④どうでもいい話(観たくなかった『イミテーション・ゲーム』)
観たくなかったんです。本当は。
じゃあ何故観たんだ。というと、長い話になるんですけど…

…主演と助演が好きな俳優だったので、制作前から期待していた。
→公開前に宣伝映像を観たら、
  ・地味。退屈そう。、
  ・カンバーバッチの髪型がイヤ(伝記映画だからしょうがないし、アサンジ役の時よりはましだと思う。それでも)
  ・邦題がイヤ。「天才数学者」……。

→オスカー争いしていたので、タイトルを日々目にすることに。
→天邪鬼なので、話題になったり全米に泣かれたりすると観る気が失せてくる。
→オスカーの行方を見届け、気持ちが一段落してしまう。(ノミネートが多くて気になっていたんですけど、結果的に脚本賞のみ受賞しました。エディ・レッドメインの(タイトル忘れました)が強かったですよね。)
→公開中は観に行かず。
→公開後、関心を取り戻しWikipediaチューリングの項目を読む。
→「この人の伝記映画なら面白いかも」と感じる。
→DVD発売。パッケージを観て微妙な気持ちになる。0
→年末。お邪魔した先で住人が借りてきてくれる。そしてブルーレイのケースに書かれた文字が。
分類:サスペンス
よしきた、観よう

→視聴。一件落着。


…長々と失礼しました。
年末なので、エピソード供養ということでご容赦ください(笑)

つまり何が言いたかったかというと、「観てよかった」、はい、これだけです。


最後に、映画は人と観ると楽しいですね。いつも一人で観るから忘れてました。
皮肉の応酬が楽しい(イギリス人は皮肉なしでは会話ができないんですかね?)映画なんですけど、皮肉が飛び出すたびに一緒に観てる人たちの忍び笑いが部屋に広がって、楽しさ3割増しでした。

一緒に観てくれた人に感謝。