よのなかは。

映画・本の感想。観て/読んで心打たれた作品を紹介しています。

論理的でロマンチック。 『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』感想

原題:Extremely Loud & Incredibly Close
ダルドリー監督
2011年、アメリカ


DVDのパッケージを見ると不安な気持ちになるし(幸薄そう)、タイトルも長くてなんだかなあ(語感は好きだけどよく判らない)と、気になりつつも観ずにいた作品。

ものすごくうるさくて、ありえないほど近い

長いですね。俳句より長い。ゲオの貸出票にタイトル載りきってなかったです。


観ようと思ったきっかけは、どこかの紹介文で主人公の少年について書かれているのを読んだことです。
その瞬間、この長ーいタイトルがしっくりきて、「ああ、そういうことだったのか。」と心の深いところにすっと降りてきて、そこから観ようかなという気持ちになりました。





あらすじ_________________________________________

アメリカ同時多発テロで世界で一番好きな父親を喪った少年オスカーが、父が遺した鍵に合う鍵穴を探すため、自らの住むニューヨーク5区中の人々を訪ね、調査していく・・・、というのが大筋です。


オスカー少年は、人と交流することは苦手です。さらに閉所や大きな音などなど、苦手なものを避けるために交通手段も限られてきて、(なんと徒歩で調査を始めるのです)そのうえ様々なこだわりもあるので、なかなか難儀です。父が死んでから調査のために家を空けがちなオスカーは、母親とぎくしゃくしてしまいます。
しかし、それでも進めていくうち、途中で調査仲間も加わり、そして遂に鍵に合う鍵穴を知る人物が現れ・・・。





感想
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感想は以下の四項目に分けて書きます。

①お父さん
②お母さん(*ネタバレあり)
③矛盾語法ゲーム
④太陽が・・・

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①お父さん

主人公オスカーのお父さんについて。
演じているのはトム・ハンクスです。このことからもわかるように(笑)、理想的なキャラクターです。
小説的と言っても良いかもしれません。現実感がないくらい「良いお父さん」なのです。


対象が何であれ(人でも世界でも状況でもなんでも)、まっすぐ愛するって案外難しいと思うのですが・・・。(私がひねくれてるから?)
それができる人です。特に家族への愛はまっすぐで、まぶしいです。あたたかい(暑くはない)!きらきらしてる!季節で言ったら春って感じの人です。


何に対しても「愛そう」とか考えてないんですよね、きっと。
ただ全てを「愛している」だけ・・・。愛することの達人だと思いました。


②お母さん *ネタバレあり

続いてオスカーのお母さん。この映画のオチの半分は彼女ですね。こちらも演技力に定評のあるサンドラ・ブロックが演じていました。

心温まるオチが待ってはいたのですが・・・。
終盤から結末へと向かって行く過程で、フィクションとはいえ「奇跡」の重なりに辟易してしまって(私がひねくれているから?)感動より先に、脱力しました。
一人で観たので感想を言い合う相手もなく、
消化しきれなかったのが残念でした。


観た後で原作小説があると知って、この計算され尽くした感じにも合点がいきました。


③矛盾語ゲーム

オスカーとお父さん(後にお祖父さんとも)がやっていたゲームがありまして、それがこちら。
ルールは単純。「矛盾する二つの言葉を組み合わせた表現」を交互に言っていくだけ。例えば「生ける屍」、「静寂を聴け」なんて具合です。

これが面白い。

何てことないシーンですが、とても印象に残っています。この遊び、一度やってみたいです。しりとりに飽きた時なんかにもおすすめですよ。


④太陽が・・・

オスカーは数字や日付に強く、(こだわりがあるといってもいいかも)過分に論理的で感情には疎い、その他諸々の特質を備えており(それがこの映画のミソです)、それらの特質は作中数えきれないほど多くのシーンで現れています。


そんなオスカーが前半に、「太陽が爆発しても、地球にいる自分たちは8分間それに気づかない。太陽から地球まで光が届くにはそれだけ時間がかかるから、その間、世界は変わらずに温かい・・・」と語るシーンがあります。

そして、「お父さんが遺した最後の謎(鍵穴の謎)を解く調査を行うことで、お父さんとの『最後の8分間』を少しでも引き延ばしたい」と、オスカーは調査を始めるのです。


感動的なオチより何より、私はここに一番グッときました。
オスカーらしく愛情を表現しているように感じて、堪らない気持ちになりました。