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よのなかは。

映画・本の感想。観て/読んで心打たれた作品を紹介しています。

目の覚めるような、夢のような。 『グランド・ブダペスト・ホテル』 感想

ウェス・アンダーソン監督
2014年


キャストの豪華さと独特かつ美しい色彩で話題になりました、グランド・ブダペスト・ホテル
パッケージや断片映像から、「美しい色彩世界の中、グランド・ブダペストホテル(豪華そう!)でこれまた豪華なキャストが生み出すエッジの効いたシュールさ」
をぼんやりと妄想期待していましたが、

近所のゲオで探したところ、コメディーのコーナーにありました。えっ。そうなんだ。
これは予想よりテンションの高い映画かもしれないぞ、果たして私についていけるものだろうか?

と、不安の湧いてくる中観たのですが。




何ということでしょう。



エンディングではほとんど泣いていました。(感情移入するにも程がある!)


こんなことになるなんて、想像していませんでした。

まあ泣くかどうかは大した問題ではなくて、ラストに至るまでにじわじわと胸がいっぱいになっていくんです。
その過程が堪らなく愛おしく、エンディングに至るまでに私の小さな胸の容量を超えてしまった…そんな映画でした。


力強くも儚く輝く人々は、豪華ホテルなんて目じゃないくらい素晴らしかったです……。




ここからはこの映画のどこがどうすごいのかご紹介します。

魅力を取り出して言葉にするのも野暮かもしれませんが、3項目に分けて整理してみました。(素晴らしい映画に出会えた記念に!)


1.時代設定

これは「時代設定の勝利」と言って良いのではないでしょうか。

戦間期、1930年代が舞台の中心です。

戦間期、あと数年で第二次大戦(厳密には仮想の戦争という設定みたいです)が始まるなんて、まだ誰も知らない、で、人々はそこそこ浮かれてる、豪華ホテルも繁盛してる、でも薄らときなくさくなってくる、そして遂には戦争の足跡が聞こえてきて…
この辺が舞台なんですね。

終盤にかけて胸(と目頭)が熱くなるのは、浮かれてるのに確実に戦争の足音が大きくなってくる、迫ってくる時代だけが持っている切なさを感じるからかもしれません。


この「何かが迫ってくる」感覚っていうのは観ている間ずっと感じていて、それは入れ子構造の効果でもあると思います。

ここでいう入れ子構造って言うのは、時間がどんどん遡る構造ってことです。


①現在(一瞬だけ)
②過去(1985)(作家:「昔こんな人に会ってな・・・」)
③過去の過去(1968)(作家が会った人:「昔こんな人がおってな・・・)
_________ここまで序盤

④過去の過去の過去(1932)←メインパート(作家が会った人が、昔会った人との思い出を回想する)


こんな感じ。
ややこしくて恐縮です!伝わりますかね?
グランド・ブダペスト・ホテルのオーナーであるおじいちゃんが、「過去の過去の過去」を振り返り、語る。この語っている内容が映画の中心=映画の大半を回想シーンが占める、という感じ、なん、です、が…。

で、メインである回想シーンに入るまでに僅かながら現在と過去のシーンがあるので、好奇心は揺さぶられるわ、観終わったあとに並一通りではない達成感も味わえるわで、とても全編通して100分しかないなんて信じられない。
満足感が凄いです。

壮大な何かを観てきた気分になって、感極まります。




2.主人公の魅力

もう一つ、主人公の魅力もこの映画の売りだと思いますね。
キャスト数こそ多いものの、あくまでメインは主人公であるホテルコンシェルジェ(演:レイフ・ファインズ)とその弟子であるベルボーイの二人です。
そもそもこの映画はメインストーリーが主人公の人生の1ページをひたすらさらった内容になっていますので、主人公の魅力なくしては成立しないのです。




3.その他すべての登場人物たち

この映画、各人物の立場とキャラクターが明快で、濃いです。濃厚です。ラーメンでいうと豚骨。それも脂がすごいやつ!
ビジュアルにもそれが表れている(明快!)のが『グランド・ブダペスト・ホテル』の強みだと思います。

例えば衣装や態度を役柄に応じて極端にわかりやすく演出してしています。
ティルダスウィントンの美貌をしわくちゃの老けメイクでアレしてしまったのも、単純にウケを狙った悪ふざけなのかな、とか思ったりもしたんですが、ちゃんと目的があるのだとわかりました。そりゃそうか。

そのおかげで、皆それぞれ個人名より「作家」とか「伯爵夫人」「メイド」「執事」「警官」「殺し屋」といった役割での呼び方がしっくりくるので、面白いです。


そんな事情もあってか、観終わって間もないのに個人名を覚えているのが一人だけなんですけど、(実は主人公の名前も思い出せない)登場人物の顔と、登場した場面については他のどんな映画にも負けないくらい明瞭に思い出すことができます。

で、これだけ様々な立場の役柄が好き放題いろいろな場所で動いているのです。(雪山でゴンドラ乗ったり…刑務所で服役したり…)


それでいてこれら豪華キャストに潰されない強さが、この作品にはあります。
キャスト数多いけど、あくまでメインはレイフファインズとベルボーイの二人、というのが明快で効果的。
やっぱりここがポイントですよね。

レイフファインズ演じるホテルコンシェルジェとその弟子のベルボーイ、この二人を中心に、たくさんの人々を巻き込んで物語は進む…。


本当に、目の醒めるような、夢のような物語でした……